高校授業料無償化に伴う公立高校、自治体の使命

東京都は2024(令和6)年度より高校の授業料の実質無償化を、国に先行する形で実施しております。少子化が進む中で、子育てにおける経済的負担が軽減されたことで、学校の選択肢拡大や卒業後の進路選択に大きな影響を与えていることは一定の効果と言えますが、公立高校と私立高校の競争が教育の質の向上につながっていかなくてはなりません。

昨年の無償化に伴い、2025年高校入試において、全日制都立高校の入試応募倍率は平均1.29倍と前年より0.09ポイント減少し、現在の制度で募集の始まった1994年以降最低となり、実際に試験を受けた受験倍率は1.20と過去2番目の低さとなりました。また、受験倍率が1倍を下回る定員割れの学校は62校と全体の37%に上りました。

私立高校の人気が高まることによって、多様な生徒が集まる公立高校の定員割れが進み、公立高校の再編が懸念されます。特に公立高校が地域の教育の拠点として重要な役割を果たす多摩西部や島嶼部など過疎地などで、公教育の安定性が心配されます。

こうした状況を踏まえ、都はこれまで以上に都立高校とともに各校が目指す教育方針や特色を明確に打ち出し、積極的に発信していくことが求められます。そして、特色ある教育活動を行っていくために、各学校の裁量で使える予算を拡充し、選ばれる都立高校を実現していかねばなりません。また、私立高校と都立高校の自由と規制のあり方を含め、一定のルールのもと、入試制度についても議論を進めていく必要があります。

高校授業料の無償化は、東京都にとって、都立高校と私立高校が切磋琢磨することにより、教育の質の向上につなげていくという覚悟を持って進めていかねばならない大変重要な課題であると思います。

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