今こそ、需要を喚起する景気対策を。

令和7年都議会第1回定例会が2月19日に開会し、2月26日代表質問が行われました。今議会では、都税収入が過去最大の6兆9,000億円台となり、前年度比で約5,431億円の税収増が見込まれており、東京の底力を引き出すための活用が大きなテーマです。

物価高騰により、国内需要が依然圧迫されており、都民消費や企業の設備投資がマイナスになっている状況において、都税増収分を還元し、都民生活を支え、都政の活力を取り戻していかなければなりません。

税収が増えて財政収支が改善しても、都内の需要が委縮しているようでは、再びデフレ圧力が生じます。経営者の皆様の血の滲むような賃上げで、明るい兆しが見えてきた今こそ、需要を喚起する景気対策を都政から実行して参ります。

さて、現在国では来年度予算成立に向けて、「103万円の壁」の引き上げに向けて、国民民主党との議論が進められております。「103万円の壁」の引き上げは、労働時間と国民の手取りを増やす一つの解決策であり、重要です。その中で、国民民主党が主張する基礎控除の部分を178万円に引き上げる案は、累進課税率の高いお金持ちほど得をするという課題があります。また政府の試算では、7.6兆円の減収と言われております。ここ3年間で名目GDPの増加と円安による外貨資産の増加で、国の純債務残高はストックベースでGDP比150%近かったものが、8割程度に減少しており、債務過剰を心配する状況ではありません。しかし今後の社会保障、防衛費などを考慮すると、税収基盤に甚大な悪影響を与えてしまい、慎重にならざるを得ません。

更に課税最低限を178万円まで引き上げる根拠は、「103万円の壁」創出時の1995年と比べ最低賃金が1.73倍伸びており、課税を回避するために、年収103万円以内となるように労働時間を調整して働いている人は、その間の物価上昇分だけ実質所得が目減りしているため、課税最低限を引き上げて補う必要があると主張しています。

これに対し与党は、消費者物価全体でなく、生活必需品を中心とする品目の価格上昇率に多少上乗せして、123万円という数字を提示しています。生活必需品の上昇分による実質所得の目減りを補うものであり、新たな財源を確保しないと説明しています。この引き上げによる税収分は7,000億円程度試算されていますが、内需を喚起する、国民の所得を増やすという目的を考えれば、この程度の引き上げでは景気対策にもならないと感じます。また、どちらの主張にしろ、社会保障制度を今後どのようにするのかをきちんと示さず、場当たり的なバラマキ感がぬぐえません。

国内需要を喚起し、家計消費・設備投資を増やしていくために、消費税減税が1つの方策として検討されております。景気刺激策として世界では、政府が税制上の支援措置を打ち出す中、注目されているのが、中小企業対策としても位置付けられている付加価値税の減免で、既に、10ヵ国が実施しています。

特にコロナ禍において世界経済が低迷する中、経済対策としてドイツをはじめ各国で実施しました。言うまでもなく、消費税減税は事業者への給付金と違い、中間企業への手数料もなければ振り込みの手間もなく、最も簡素で公平で効率的です。収入が減っている国民にとって、消費税減税は毎日の買い物の度に恩恵が得られ、消費が喚起され内需を支えます。

そこで特に家計消費を拡大する目的で、食料品の消費税率をゼロにする案が検討されております。2023年の名目GDP統計で見ると、正味の家計消費にあたるエンゲル係数が28%ほど上昇しており、物価高の中で家計収入が増えず、エンゲル係数が上がっています。28%のエンゲル係数で計算すると減税額は年間5.5兆円ほどで、岸田総理時代の定額減税と同額と言われています。食料品の消費税の税率をゼロにしたら、その分他の商品にお金が回るから消費税収の減収はより少なくなります。

財務相は一旦消費税率を下げると二度と戻せないと抵抗しますが、各国は期間限定で行っており、日本の消費全体が上がっていくまでの期間(コスト上昇分の価格転嫁が遅れている機関)、減税を中心とした財政による景気対策は喫緊の課題として取り組んで欲しいと思います。

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