東日本大震災において、地震(マグニチュード9.0、最大震度7)、津波(福島県相馬市9.3m以上)、原子力災害により甚大な被害を受けました福島県浜通り地域に、4月6日㈬、7㈭と調査のためお伺いし、現在の復興状況と今後の取り組みについて、ご報告を受けました。現在、福島県復興に向けた工業団地、福島イノベーションコースト構想のお手伝いをさせていただいており、工業団地進出へ意欲のある事業者の要望をまとめております。まだまだ進出に不安を感じている事業者へ、今後の取り組みを含めた正しい情報を発信していくことによって、後押しが出来ればと思っております。
今回の訪問は桜のシーズンでもあり、東京では既に満開であることから、幼少の頃の思い出のある「夜の森公園」の桜を期待しておりましたが、まだ少し早かったようで、1分咲きの状況でした。
被災された地域では、立ち入り制限区域が少しずつ解除され、鉄道も復旧したことから、街にも明るさが戻りつつあるようです。しかし、震災前の住民が1万5830人であったところ、現在の住民登録人口は、富岡町において1万1900人ですが、実際に住まわれている方は、その3割くらいと言われており、まだまだ寂しさを感じざるを得ません。
福島県は、東日本大震災以降もたびたび大きな余震に見舞われており、この10年間で大小合わせて1万4000回もの余震が起こっております。昨年2月13日にマグニチュード7.3、最大震度6強の地震が発生しましたが、先日の3月16日にもマグニチュード7.4、最大震度6強の地震が起こり、死者4名、負傷者97名の大きな被害をもたらしました。東北新幹線が脱線し(4月14日1ヶ月ぶりに全線再開、通常ダイヤに戻るのは5月連休以降)、東京電力管内で208万戸、東北電力管内で14万8000戸が停電し、更に上下水道、橋脚にも影響が確認されております。
東日本大震災の際にも、発生1ヶ月後の2011年4月11日にマグニチュード7.0、最大震度6弱の余震に続き、5弱の地震が4回、翌12日にも2回起こり、この2日にわたる余震により、被害が拡大したと言われております。
本日4月19日、午前8時16分にも最大震度5弱の揺れがあり、地震調査委員会からも、あと10年程度は続くと指摘されており、復興への足枷にならないか心配しております。
東日本大震災復興・再生に向け国は、東日本大震災復興基本法に基づき、平成24年2月10日に、当初設置期間を10年とした(10年延長され2031年まで)復興庁、内閣総理大臣をトップとして事務を統括する復興大臣、閣僚級の決定機関「復興推進会議」、関係自治体の知事や有識者で構成する「復興推進委員会」を設置し、現場主義の考えのもと、復興・再生を加速しています。
復興事業の進捗は、状況が異なることから、地震・津波被害地域は2026年までが目安となっており、原子力災害被災地域では、当面2031年までを本格的復興・再生の期間とされています。
東京都の職員派遣は、現在では福島県のみとなっておりますが、今後とも複合的被害の大きい福島県をしっかりと支援して参ります。
福島県浜通り地域のまちづくりへの取り組みは、居住地域の高台への移動を含め、ハード面ではこの10年間で計画の9割以上に達しております。また災害に強いまちづくりとしては海岸保全施設の整備と、防災訓練・防災教育及びハザードマップ作成等のソフト支援を組み合わせた「多種防衛」による複合的な減災対策を柱として取り組まれ、今後は住民の帰還に向けた本格的な再生が始まります。
この度の調査の中で、福島県庁の方から、復興・再生への課題として3つの指摘を受けました。
1つ目は、生活空間における放射能量の低減です。現在も積算線量の目安となっております、人体に影響を与えるとされている年間100ミリシーベルトに近い地域があり、県内の除染を更に進めていかねばなりません。
2つ目は、住民帰還制限区域解除に向けた取り組みを進め、住民との土地利用の方針をまとめることです。かつて水田であった場所での耕作地としての利用が出来ない状況において、今後の土地利用の合意形成は、大変困難を極めるものと予想されます。今後は、仮置場に置かれた除染土を来年度中に中間貯蔵施設へ搬出することになっており、その後の地域の再生がまちづくりの要となって参ります。
3つ目は、まだまだ多くの復興・再生への作業が計画されている状況において、その担い手が不足していることです。全国的に、様々な分野で担い手不足が指摘されておりますが、復興・再生への期限が迫る中、今後も着実に進めていけるよう国の調整が必要となって参ります。
今回、福島県庁の方々のご協力のもと、様々な調査をさせていただきましたが、東京都が支援できること、国へ要望することなど、しっかりと対応して参ります。
本格的な復興・再生には、まだ時間がかかると思われます。
大切なことは、東日本大震災の記憶や教訓を風化させることなく、次世代に伝えていき、ともに安全・安心な社会づくりを進めていくことだと思います。
一日も早い復興・再生を祈念し、今後とも後押しをさせていただきます。