沖縄復帰50年、今こそ現実に向き合い主権を守る毅然とした姿勢が必要

一昨日の読売朝刊において、沖縄復帰50年の記事に、尖閣沖消えた平穏と言う見出で、一心丸・丸福丸
事件(尖閣諸島疎開船遭難事件)の事が取り上げられていました。
先の大戦末期、6月23日に沖縄本島が陥落し、石垣島や宮古島にも米軍の攻撃が有るだろとの予測
から、約180名を乗せた二隻の疎開船が石垣島から台湾に向けて出港し、一隻は米国機の攻撃により沈
没、もう一隻は、攻撃を受けながらも魚釣島(尖閣諸島の島)に漂着し、70数名の方々が餓死や病気によ
りお亡くなりになりました。
国内唯一の地上戦となった沖縄戦における対馬丸(疎開船)の悲劇は、アニメ映画等で広く知られてい
ますが、この事件についてはこれまで殆ど取り上げて来られませんでした。私はこれまでマスコミの
方々に、一心丸・丸福丸の悲劇についても事実として報道すべきと話をして参りましたが、今回このよ
うな形で取り上げられたことを前向きに受け止めたいと思います。
石垣市では、市内に慰霊碑を建立し、例年市長のもとで慰霊祭を行っております。
新聞では、1972年の沖縄本土復帰の3年前に魚釣島に碑を建立し、遺族らが参加して慰霊祭が行われた
と記されていますが、慰霊碑とは名ばかりで、小さな石に慰霊と掘られた石が斜面におかれているだけ
のものです。(立派なのは、古賀辰四郎氏の尖閣開拓の顕彰碑で、古賀家から土地の譲渡を受けた栗原氏
が設置したものです)
また記事では、2012年9月の国有化により中国の公船が頻繁に領海侵入するようになったと誤解を受
ける内容ですが、現地の漁師の方々の話では、国連機関の調査で石油埋蔵の可能性が指摘され、中国と
台湾が領有権を主張し始めた1971年以降から領海侵犯が行われるようになり、以来頻繁に日本の漁船が
中国の公船に追いかけ回されるような危険な行為を受けて来たと述べておりました。石垣島から170キ
ロも離れた領海で、体当たりを受け船が損傷すれば、命を落とす危険に曝されるます。かつての豊かな
漁場が死と隣あわせの危険な海域になってしまったと語る現地の漁師の方々の悲痛な思いをしっかり受
け止めていかなくてはなりません。
こうした中で、かつて石原慎太郎知事が一旦東京都が栗原家から譲渡を受け、野生化したヤギにより
生態系が壊された島の管理や漁民の安全の為に船溜まりの整備をしようと動かれたことは、政治家とし
て素晴らしい事と思います。この動きに全国から1万5000人以上の方々から寄付が寄せられ、私は当
時の財政委員長として、寄付を下さった方々の思いを大切に、他に使うことの出来ない基金条例を定
め、現在も約14億円を越える額が、尖閣諸島基金として都財政に残っております。

こうした最中、当時の民主党政権は、海上保安庁の巡視船が領海侵犯をしてきた中国海警局の公船に
体当たりされ、危険な行為を繰り返した中国人を拘束したにも拘わらず、中国の脅しに屈し、拘束を解
き、更にこの事実を隠蔽しようとしました。また、中国政府の指示により香港漁民が魚釣島に上陸し中
国の国旗を掲げ、逮捕したにも拘わらず、またしても中国政府の脅しに屈し、翌日チャーター便で香港
に送り返すと言う失態が大きく報道されました。(ニュースでは報道されませんでしたが、掲げられた中
国旗は、島の管轄は八重山署と言うことで、署員が来るまで暫く掲げられていました。)こうした事が強
く非難されたことから、当時の野田総理が突然、東京都と栗原家との話に割って入り、提示されていた
額よりも8億円以上も高額で国有化し、非難をかわそうとしました。
しかしこの事が、国家の主権とは何かを考える契機にもなり、国会で領海、排他的経済水域の維持・
保全の必要性から国境離島新法の制定に繋がりました。
日本には現在、6852の島々があり、一番島が多い長崎県には、971の島々が有ります。(東京都は有
人、無人の島々が330)かつて私達が視察で長崎県に伺った際に、当時の長崎県議会議長より、国境離島
の維持・管理に国の責務が定められたことは永年の願いであり、切っ掛けとなった東京都の取組に感謝
しますとのご挨拶を頂きました。東京都においても、岩礁のように浸食され、水没仕掛けていた沖ノ鳥
島を750億円かけて整備したことにより、国土面積を上回る約40万平方キロメートルの排他的経済水域
の保全に繋がりました。領土、領海、排他的経済水域など主権に関わる事に対して、毅然と死守する姿
勢こそが、国家として国民の結束を生む、何よりも大切なことだと思います。
昨年の2月に中国は、海警局の船に武器使用を認める法律を施行し、海域の緊張は更に高まっており
ます。また、昨年中国海警局の公船が尖閣沖の接続水域(領海の外側22キロ、)に入った日数は332日にな
りました。台湾への脅威が高まり、米国のこれまでの「戦略的あいまい策」の見直しが行われている中
で、国家として主権を守る、我が国の姿勢がますます問われていると思います。

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